税務調査はすでに始まっている。顧問税理士にも立ち会ってもらった。それでも「このまま任せてよいのだろうか」と感じていませんか。
税務署の指摘をそのまま伝えられるだけで、理由が分からない。追加でいくら払うのか聞いても、まだ分からないと言われる。経営者としては、日々の資金繰りや投資の予定もあり、結論が見えない状況は大きな負担になります。
そんなときは、まず不安の中身を整理し、顧問税理士に説明を求めましょう。そのうえで疑問が残るなら、別の税理士に意見を聞くという選択肢があります。相談したからといって、必ず顧問契約を解約する必要があるわけではありません。
この記事では、毎年申告を行い、顧問税理士もいる法人の経営者に向けて、対応を見直す判断のポイントと、相談までの準備を説明します。
本文で解説する主な論点を整理した図です。詳しい条件は各節で確認できます。
この記事の目次
「反論してくれない」だけで判断しない
税務署に強く言い返さない税理士を見ると、頼りないと感じるかもしれません。しかし、調査官との会話の強さと、対応の適切さは別の問題です。
指摘に根拠があれば修正を勧めることもありますし、資料を集めるために、その場では結論を出さないこともあります。
確認したいのは、経営者が判断できる説明を受けているかどうかです。何を指摘され、会社として何を認め、何を確認しているのか。説明を受けても理解できない部分があれば、専門用語を使わずに説明してほしいと伝えて構いません。
例えば「外注費が否認されそうです」だけでは、対応を決められません。取引の実在性が疑われているのか、仕事の完了時期が問題なのか、支払先との関係が問題なのかで、集める資料も検討する内容も変わります。
年商一億円前後の会社でも、営業、現場、経理、社長で持っている情報が分かれていることがあります。顧問税理士が事実を把握できていない原因が、社内からの情報不足にある可能性も確認しておきましょう。
別の意見を聞く前に整理したい四つの不安
指摘の理由が分からない
「税務署が駄目と言っているので」という説明だけでは、会社がどの点を直すべきか分かりません。対象の取引、年度、金額、問題とされる事実を分けて尋ねてみてください。まだ調査官に確認中であれば、何を照会しているのかを聞きます。
理由を整理すると、経営者の考えと税理士の考えが対立しているのではなく、見ている資料が違うだけだったと分かることもあります。まず、同じ事実を前提に話せる状態を作ることが大切です。
追加負担の範囲が見えない
提示された数字が、経費として認められない金額なのか、追加で納める税額なのかを確認しましょう。法人税だけの数字なのか、消費税や地方税なども含むのかによって、資金繰りへの影響は変わります。
まだ最終計算ができない場合でも、確定している部分と未確定の部分を分けてもらうと判断しやすくなります。「現時点の見込み」「計算に含めていないもの」「今後変わる可能性」を一緒に確認するのが実務的です。
次の動きが分からない
資料を提出した後、連絡がない期間が続くと、不安が大きくなります。ただし、連絡がないことだけで、何も対応していないと決めつけるのは早計です。相手の回答待ちなのか、税理士が検討中なのか、会社からの資料待ちなのかを確認します。
次の報告日と、それまでに誰が何をするかを決めましょう。「進展があれば連絡する」という約束より、「来週金曜日に、進展がなくても現在地を共有する」という約束の方が、経営上の予定を立てやすくなります。
意思確認がないまま進みそうで不安
修正申告書の案が届いたものの、内容の説明がない。いつ提出するのかも聞いていない。このような場合には、まず、説明を受けてから提出内容を確認したいと明確に伝えます。
税額の計算だけでなく、どの指摘を反映しているのか、未解決の疑問が残っていないかを確認しましょう。社内の決裁に必要な時間も早めに共有します。確認したいという意思を、相手が当然理解していると思い込まないことが重要です。
顧問税理士に聞くときは、責任追及より事実確認から
「どうして戦ってくれないのですか」と聞くと、話題が税務署への態度に偏りがちです。代わりに、次のような質問をまとめて送ると、判断に必要な情報を得やすくなります。
- 現在の指摘事項を、取引・年度ごとに教えてください。
- 先生として、妥当だと考える指摘と、確認が必要な指摘はどれですか。
- 会社から追加で出せる資料はありますか。
- 想定される負担額に、まだ含まれていない税金はありますか。
- 次回の回答予定と、当社が判断すべき時期を教えてください。
メールの冒頭は「資金繰りと社内判断のために、現状を整理したいと考えています」とすると目的が伝わります。電話で話す場合も、質問を先に送っておけば、資料を確認したうえで回答してもらいやすくなります。
面談後は、会社側で理解した内容を簡潔にメールで返す方法も有効です。「当社の理解では、争点は二点で、追加資料は三点です」と書き、認識が違う箇所を訂正してもらいます。
やり取りを残す目的は、後から責任を追及することではなく、対応のずれを防ぐことにあります。
面談では「説明の不足」と「判断の相違」を分ける
例えば、顧問税理士から外注費の修正を勧められたという架空の場面を考えてみましょう。社長は作業が実施されたことを知っていますが、税理士には請求書しか渡っていません。
税理士は、作業内容を確認できる記録がない前提で話しているかもしれません。
この場合、最初に必要なのは税理士の交代ではなく、前提資料の共有です。社内に作業記録があることを伝え、確認したうえでも同じ判断なのかを聞きます。情報がそろってから、判断が分かれる点を確認します。
一方、同じ資料を読んだうえで取扱いに疑問が残るなら、別の専門家の見解を求める対象が明確になります。「先生の説明が分かりません」から、「この記録を踏まえても、その取扱いになる理由を確認したい」へ問いを具体化できます。
面談の時間を取ってもらう際は、日常の月次報告とは別に、調査の指摘を確認する時間を設けるとよいでしょう。決算や資金繰りの話と混ざると、疑問が解消しないまま打ち合わせが終わることがあります。
確認事項を先に三点程度へ絞って送ると、準備をしてもらいやすくなります。
社長だけで説明を受けるのではなく、取引を知る担当者や経理責任者が同席する方法もあります。その場で事実を確認できれば、後日の伝言や再確認を減らせます。ただし、社内で情報を共有する範囲は、必要な担当者に限定しておきましょう。
面談後は、説明で解消した疑問と、まだ残る疑問を分けます。一度不信感を持つと、すべての対応を悪く捉えやすくなりますが、確認できた内容は確認できたものとして整理する方が、次に必要な支援を判断しやすくなります。
セカンドオピニオンが役立つ場面
説明を受けても適用根拠が分からない、重要な資料が検討されていないように見える、指摘額が大きく経営判断への影響が重い。このような場合は、第三者の税理士による確認を検討できます。
確認の対象を絞ると相談が具体的になります。「今回の調査対応を全部見直してほしい」よりも、「この外注費の指摘について、資料を追加する余地があるか確認したい」と伝える方が、必要な作業や費用を見積もりやすくなります。
第三者の見解は、現在の顧問税理士と同じ結論になることもあります。それでも、同じ結論に至る理由を別の角度から確認できれば、経営者が納得して判断する材料になります。
相談の価値を、必ず税金が減ることだけで測らないことも大切です。
一方で、希望する答えが出るまで何人にも相談を続けると、費用がかさみ、対応が遅れます。相談時には、何を確認できれば意思決定できるのかを決めておきましょう。
説明を受けても重要な疑問が残る場合は、指摘内容を整理したうえで、おまかせTAXの税務調査サポートをご確認ください。
顧問税理士を替えずに相談する場合
別の税理士に相談すると、現在の税理士との関係が悪くなるのではないかと心配する経営者もいるでしょう。そこで、初回相談では、関係を維持したいのか、交代も検討しているのかを伝えることを勧めます。
助言だけを受ける方法と、調査対応の窓口に入ってもらう方法では、必要な調整が異なります。資料の確認だけであれば、まず会社が保有する資料を基に相談できる場合があります。
ただし、情報が不足していれば、顧問税理士への照会が必要になります。
税務署への連絡や正式な代理を依頼する段階では、誰が窓口となるか、既存の委任とどう調整するかを決めます。税理士が税務代理を行う場合の権限の明示については、国税庁が手続を案内しています。国税庁「税務代理の権限の明示」
経営者が二人の税理士の間で伝言を繰り返す状態は避けたいものです。見解が分かれた場合には、相違点と前提資料を整理し、必要に応じて直接確認してもらえる体制を相談しましょう。
初回相談のために準備する資料
最初から全資料を完璧に整理する必要はありません。まず一枚のメモに、業種、年商、決算月、調査開始時期、主な指摘、次の回答予定日をまとめます。申告済みであることと、顧問税理士がいることも記載しましょう。
そのうえで、対象年度の申告書・決算書、指摘に関係する契約書や請求書、税務署や顧問税理士とのやり取りを用意します。口頭で受けた指摘は、聞いた日時、相手、会社側の理解をメモに残してください。
記憶が曖昧な部分は、その旨を区別します。
不利に見える資料も含めて相談することが重要です。都合のよい資料だけでは、判断の前提が偏ります。会社に不利な事情がある場合こそ、早い段階で共有した方が、現実的な方針を検討できます。
資料の送付方法は、相談先が指定する安全な方法を使いましょう。初回の問い合わせ本文に、大量の個人情報や取引先情報を貼り付ける必要はありません。概要を伝え、必要な資料と共有方法の案内を受けてから進めます。
相談先を選ぶときに確認すること
税務調査への対応経験に加えて、今回の争点を扱えるかを確認します。業種が同じでも、売上の計上時期と役員への支出では、検討する内容が違います。
資料を見る前に結果を断言する説明より、何を見て判断するのかを示す説明が参考になります。
料金は、初回面談、資料確認、意見の説明、税務署対応を分けて確認してください。書面で見解を受け取れるか、追加質問は含まれるか、緊急対応が必要な場合に受けてもらえるかも重要です。
また、依頼後に何が手元に残るのかを確認しましょう。結論だけでなく、判断の前提、未確認事項、会社が次に行うことが分かる形で説明してもらえると、顧問税理士と方針を共有しやすくなります。
よくある質問
顧問税理士に不満があるだけでも相談できますか
不満をきっかけに相談して構いません。ただし、税務上の見解を得たいのであれば、具体的な指摘と資料が必要です。「説明が少ない」という問題と、「判断に疑問がある」という問題を分けて伝えると、解決方法を考えやすくなります。
調査が終わりそうな段階でも意味はありますか
段階によって確認できる範囲が変わるため、修正申告書の提出予定や処分通知の有無を最初に伝えてください。短い日程では十分な検討が難しい場合もあります。相談しただけで税務署との予定が自動的に変わるわけではありません。
結局、今の税理士の判断が正しかったら無駄ですか
結論を確認し、経営判断の不確実さを減らすことにも意味があります。ただし、費用との釣り合いは考える必要があります。確認したい一点に絞り、依頼範囲と費用を事前に確認するとよいでしょう。
まとめ:説明を受けても不安が残る方へ
- 不安を、指摘・金額・進捗・意思確認に分ける
- 顧問税理士の判断理由と必要資料を確認する
- 疑問が残る論点に絞って別の意見を聞く
この節の確認項目です。数値・適用条件は本文とあわせて確認してください。
税務調査で大切なのは、経営者自身が指摘の内容と対応方針を理解していることです。顧問税理士への確認を進めても疑問が残るなら、別の視点から資料を確認することを検討してください。
おまかせTAXへのご相談では、調査の進行状況、主な指摘、現在の顧問税理士との関係についてお知らせください。ご希望を踏まえ、対応の可否・範囲・費用をご案内します。
【ご注意】
この記事の法令・税務情報は参考情報であり、正確性を保証するものではありません。執筆時点の法令を参考にしているため、法改正等に対応していない可能性もあります。
実際の税務判断は必ず最新の法令、顧問税理士、国税庁ホームページ、または最寄りの税務署等にてご確認ください。
※本記事は、申告済み法人の一般的な税務調査を想定した解説です。個別の判断は、対象年度の法令と具体的な資料に基づいて行います。



