顧問税理士に税務調査を任せているものの、指摘への対応方針に納得できない。追加納税の説明を受けたが、別の見方がないか確認したい。そんな経営者が検討できるのが、税務調査のセカンドオピニオンです。
これは、現在の税理士とは別の税理士に、指摘内容や対応方針について意見を求める相談の方法です。税務署の判断を取り消す特別な制度ではなく、会社が判断材料を増やすための選択肢と考えると分かりやすいでしょう。
年商一億円前後の法人では、追加納税だけでなく、決算、融資、設備投資、社内の管理体制にも調査の影響が及びます。何を確認するために相談するのかを明確にすると、限られた時間と費用を有効に使えます。
本文で解説する主な論点を整理した図です。詳しい条件は各節で確認できます。
この記事の目次
セカンドオピニオンで確認できること
税務署の指摘と、会社の認識が食い違う理由
「実際に支払った経費なのに認められない」という相談でも、支払いの事実だけが問題とは限りません。相手が仕事をしたのか、会社の事業に関係するのか、どの年度の費用なのかなど、争点を特定する必要があります。
第三者に資料を見てもらうことで、税務署の指摘、顧問税理士の理解、経営者の理解を整理できます。単に正しい・間違っていると評価する前に、同じ問題について話しているかを確認することが相談の出発点です。
追加で確認する価値のある資料
すでに提出した資料だけでは取引の経緯が伝わっていない場合、契約から納品、請求、支払いまでをつなぐ記録が役立つことがあります。相談先には、資料の有無だけでなく、税務署に何を提出済みかも伝えます。
ただし、資料を増やせば必ず結論が変わるわけではありません。何を説明するための資料なのか、現在の疑問とどう関係するのかを確認します。関係の薄い資料を大量に送るより、争点に沿って整理する方が検討を進めやすくなります。
対応方針と、その限界
指摘を受け入れる部分、追加説明を行う部分、資料不足で判断できない部分を分けることができます。見解が得られても、税務署が同じ判断をするとは限りません。どの前提に依存した見解なのかを確認することが大切です。
相談した結果、現在の顧問税理士の方針が合理的だと確認できる場合もあります。反対意見を得ること自体を目的にすると、判断がかえって難しくなります。会社が次の一手を決められることを、相談の到達点にしましょう。
助言・共同対応・交代の違い
セカンドオピニオンという名称でも、サービスの範囲は事務所ごとに異なります。大きく分けると、資料を確認して経営者に助言する方法、顧問税理士と連携する方法、調査対応の担当を引き継ぐ方法があります。
助言のみの場合、相談先が税務署へ直接説明するとは限りません。顧問税理士との打ち合わせ、追加資料の作成、修正申告書の作成なども、最初の依頼に含まれないことがあります。契約前に「誰に対して、何をしてもらうか」を明確にします。
共同対応では、税務署の窓口と会社への報告担当を決める必要があります。税理士が二人いれば自動的に安心というものではなく、情報と役割をそろえることが重要です。会社が同じ説明を何度も繰り返さずに済むよう、共有方法を決めます。
交代を検討する場合は、過去の回答や提出資料を引き継ぐ時間が必要です。調査対応だけの変更なのか、今後の顧問契約も変更するのかを分けて考えましょう。詳しい進め方は「税務調査の途中から別の税理士に依頼できる?」でも扱います。
相談の価値を判断する三つの視点
第一は、会社への影響です。提示された税額が大きい場合だけでなく、毎年繰り返す取引の扱いが問題になっている場合には、今後の処理方針まで確認する意味があります。同じ問題が次の決算にも残るかを考えてください。
第二は、確認できる余地です。未提出の資料がある、事実関係が十分に伝わっていない、説明の前提に食い違いがあるなど、確認する対象が具体的であれば、依頼内容を絞りやすくなります。
第三は、必要な工数との釣り合いです。数年度分の取引を一から調べる相談と、一つの契約の扱いを確認する相談では、作業量が違います。最初は対象を限定し、その結果を見て追加依頼を判断する方法も検討できます。
「追加税額がいくら以上なら必ず依頼すべき」という一律の基準はありません。税額、争点、資料量、経営者の負担を合わせて考えることが大切です。
費用は何によって変わるのか
セカンドオピニオンには一律の公定料金があるわけではありません。ここでは相場を断定せず、見積もりで確認したい要素を説明します。対象年度、税目、争点数、資料量、回答までの時間、書面の有無などが、依頼内容を左右します。
面談料だけで済むのか、事前の資料確認に別料金が必要なのかを確認してください。相談後の質問、顧問税理士への説明、税務署への連絡は、同じ料金に含まれるとは限りません。
成功報酬がある場合には、割合だけでなく計算の基準が重要です。何と何を比較するのか、対象となる税目は何か、当初の金額がまだ概算だった場合はどう扱うのかを確認します。
単なる金額の更新が、成果としてどのように扱われるかも曖昧にしない方がよいでしょう。
本格的な調査対応の料金表を、そのまま助言だけの料金だと受け取らないことも大切です。おまかせTAXへのご相談でも、希望する確認内容をお知らせいただき、対応範囲と費用をご確認ください。
見積もり時に聞いておきたい質問
費用を比べる際は、同じ範囲の業務を比較します。次の質問を用意しておくと、依頼後の認識違いを減らせます。
- どの年度・税目・指摘事項を確認してもらえますか。
- 事前に読む資料の範囲はどこまでですか。
- 見解は口頭ですか、メモや書面も受け取れますか。
- 判断できない点は、どのように説明してもらえますか。
- 顧問税理士との連絡や追加面談は含まれますか。
- 追加費用が発生する前に、確認を受けられますか。
回答の早さも確認事項です。「急いでほしい」だけでなく、税務署への次の回答日や、修正申告書の提出予定を伝えます。その日程に対応できるか、どこまで確認できるかを相談しましょう。
初回相談に必要な情報と資料
最初に、会社の概要と調査の状況を一枚にまとめます。業種、年商、決算月、対象年度、顧問税理士の有無、実地調査の日、現在の主な指摘を書きます。提示金額がある場合は、税額なのか否認額なのかも分けて記載してください。
次に、相談したい問いを一文で書きます。「この支出が認められない理由を確認したい」「修正申告の前に、判断材料が不足していないか確認したい」などです。一文にすると、相談の範囲が広がりすぎるのを防げます。
基本資料は、対象年度の申告書と決算書、関連する元帳、契約書、請求書、支払記録です。すべてを最初の問い合わせに添付するのではなく、概要を伝えて必要資料の指示を受けると効率的です。
調査の経過も欠かせません。どの資料をいつ提出し、誰がどのように回答したのかを整理します。税務署の説明を直接聞いていない場合は、顧問税理士からの伝聞であることを区別します。推測を事実のように伝えないことが重要です。
面談を有効にするための進め方
面談では、最初に今回確認したいことと、判断の期限を伝えます。その後、会社の説明と資料を照らし合わせてもらいます。長い経緯をすべて話すよりも、相談先からの質問に沿って不足情報を補う方が、限られた時間を活用できます。
会社に不利な事情も先に共有しましょう。後から重要な事実が判明すると、当初の見解が変わることがあります。否定されたくないという気持ちから資料を選ぶと、相談費用をかけても現実の対応に使えない意見になりかねません。
最後には、結論だけでなく、次の三点を確認します。「何が分かったか」「何がまだ分からないか」「誰が次に何をするか」です。相談後の行動が明確になっていれば、その見解を経営判断に生かしやすくなります。
見解を受け取った後、何を確認すればよいか
相談を終えたら、会社側のメモを「結論」「理由」「前提」「次の行動」に分けると、意見を活用しやすくなります。「問題ないと思うと言われた」とだけ記録すると、どの範囲の話だったのか分からなくなるためです。
例えば、特定の契約について意見を聞いた場合、その契約書に記載された内容が実際にも行われていたことを前提としているかもしれません。会社がその前提を確認できていなければ、見解をそのまま使うことはできません。
条件付きの説明は、条件を含めて記録します。
書面を依頼する場合には、用途も伝えましょう。社内判断用の短いメモと、税務署への説明を想定した資料では、作業の内容が違います。
顧問税理士との共有を目的にするなら、そのことを依頼前に伝えると、必要な形式を相談しやすくなります。
また、一度の面談で確認していない論点まで、同じ見解が得られたと考えないようにします。法人税についての説明を、消費税や源泉所得税にもそのまま当てはめることはできません。
対象外だった事項があるなら、追加で誰に確認するかを決めます。
顧問税理士へ共有する際は、「別の先生は大丈夫と言っています」という結論だけでなく、何の資料を基に、どの理由でそう考えたかを伝えます。見解の相違を確認するには、肩書や印象よりも、その前提が重要になります。
依頼を追加するか迷ったら、最初に決めた問いが解決したかに戻りましょう。疑問が解消しているなら、広範囲な調査を重ねる必要はないかもしれません。未確認の一点が残るなら、その部分だけを次の依頼にする方法もあります。
顧問税理士との関係を保つ伝え方
顧問税理士への伝え方は、「判断が間違っているのではないか」ではなく、「会社として影響が大きいので、判断材料を増やしたい」という目的を中心にします。第三者に何を確認するのかも具体的に伝えると、役割を整理しやすくなります。
別の税理士への相談が、直ちに正式な税務代理の追加を意味するわけではありません。代理を依頼する場合の手続は、資料の確認や助言とは区別して確認します。国税庁「税務代理の権限の明示」
会社が相談内容を共有する範囲も事前に決めましょう。どの資料を誰に渡し、見解を誰へ説明するのかが明確であれば、顧問税理士にとっても対応を調整しやすくなります。
よくある質問
相談すれば追徴税額は下がりますか
必ず下がるとは限りません。確認した結果、指摘が妥当だと判断されることもあります。資料を見る前の段階で減額を前提にせず、確認対象と見込まれる作業を説明してもらいましょう。
指摘内容がまだ口頭でも相談できますか
口頭で受けた内容を、日時、対象取引、金額、理由に分けて記録してください。正式な書面がないことだけで相談できないとは限りません。ただし、説明の内容が曖昧なままでは、具体的な判断が難しいことがあります。
別の税理士の意見と食い違ったらどうしますか
まず、両者が確認した資料と前提事実が同じかを比べます。そのうえで、法令の解釈が異なるのか、事実の評価が異なるのかを整理します。肩書や話し方だけで選ぶのではなく、理由と不確実な部分を確認することが大切です。
資料がそろうまで問い合わせを待つべきですか
回答予定日が近い場合は、先に概要を伝えてください。手元にある資料、これから集められる資料を区別すれば、受任の可否や確認の順序を相談できます。ただし、相談中も従来の回答予定を放置しないようにします。
まとめ:判断材料を増やしてから、対応方針を決める
- 確認したい論点と依頼範囲を絞る
- 資料確認・書面・追加対応の費用を確認する
- 結論だけでなく前提と次の行動を整理する
この節の確認項目です。数値・適用条件は本文とあわせて確認してください。
税務調査のセカンドオピニオンは、顧問税理士を否定するためではなく、会社が内容を理解して判断するために活用するものです。相談の対象と費用を絞り、どのような説明を受けたいかを明確にして進めましょう。
おまかせTAXへお問い合わせの際は、申告済みの法人であること、顧問税理士の有無、調査の段階、確認したい論点をお知らせください。資料確認のみをご希望の場合も、その希望をお伝えいただき、対応の可否と条件をご確認ください。
【ご注意】
この記事の法令・税務情報は参考情報であり、正確性を保証するものではありません。執筆時点の法令を参考にしているため、法改正等に対応していない可能性もあります。
実際の税務判断は必ず最新の法令、顧問税理士、国税庁ホームページ、または最寄りの税務署等にてご確認ください。
※記事中の相談方法は一般的な選択肢です。個別の受任形態、回答期限、料金は、資料と進行状況を確認したうえで決まります。



