税理士が教える不動産業の経理ミスと対策

不動産業ならではの陥りやすい経理ミスがあります。
事前に「陥りやすいミス」を確認し、損をしないよう対策が必要です。

不動産業といっても業種は様々です。

●不動産設計、建築・施工業
●不動産販売業
●不動産賃貸業
●不動産管理業

不動産業の運営形態もそれぞれです。

個人事業主
●法人(株式会社、合同会社等)
●個人事業主、法人双方で不動産業の運営

不動産業は取引内容によって一度に動く金額が大きく、支払った時点で経費になるものと、ならないものがあります。

✓現金が動いていても経費にならず、資産計上
✓現金が動いていないのに経費計上

上記のケースが何度も出てきます。

例えば不動産購入時に支払った「仲介手数料」は、手数料でも資産計上です。
建物や土地に含めて計上します。
不動産業の経理をする上で、注意が必要なタイミングは何度も出てきます。

不動産経理ミスがないよう、事前に確認しましょう。

この記事では、不動産業で陥りやすい経理ミスを解説していきます。

目次

不動産業の創業手続きと資本金

株式会社を設立するには、一般的に司法書士行政書士へ依頼します。
自身でも法人設立は可能ですが、手続きは複雑で時間もかかるので専門家に依頼するといいでしょう。

株式会社を設立するなら、不動産業にかかわらず、資本金を決める必要があります。
「株式会社の設立は資本金がいくら以上」といった制限はなく、資本金1円以上あれば問題ありません。
ただ、資本金額が低いと口座開設できないケースや、融資を受けられないケースもあります。
会社によっては取引条件に「資本金いくら以上」と決めているところもあり、今後の取引予定でも資本金額は左右されます。
許認可事業によっては、資本金額に要件があり、一般建設業では500万円以上の資本金が必要です。

資本金額1000万円問題と資本金の決め方

「株式会社を設立するなら資本金は1000万円未満がいい」

会社設立を検討して調べると、どこかで見るでしょう。
これは資本金が1000万円以上あると、設立初年度から消費税を納付しなければならないからです。
消費税を納付するかどうかは「2期前の課税売上が1000万円以上か」が基準となります。
新しく株式会社を設立した場合、2期前の売上はないので、消費税の納付義務が発生しません。
ただ、資本金が1000万円以上ある場合、1期目から消費税の納付義務が発生します。

資本金1000万円以上で法人設立した場合には、設立初年度及び翌年度は消費税の納税義務があります。

「資本金額が単純に多ければいい」というわけではありませんので、注意が必要です。

不動産賃貸業と不動産管理業は、資本金額の要件はありません。
融資予定金額や今後の運営を踏まえて資本金額を決定します。
事例はすでに入居者がいる不動産を購入しているので、初月から収入は見込めます。
不動産管理業で従業員を雇うので、安定して給料を支払える程度の資本金は必要です。

初月からの収入とその他経費・返済予定額の試算を税理士と行い、不動産購入時の融資金額を踏まえて資本金額を決定するといいでしょう。

1階の貸店舗と駐車場の年間家賃が1000万円未満であれば、消費税の納付義務も発生しません。
融資金額にもよりますが、資本金1000万円未満にしておくと節税効果も期待できます。

資本金1000万円の壁とインボイス制度

2023年10月からインボイス制度が導入され、事業者によっては売上が1000万円未満でも、消費税の納付をしている事業者もあります。

以前は資本金1000万円以下で、課税売上が年間1000万円未満であれば消費税の免税事業者でした。
ただ、インボイス制度導入後から変わりました。
インボイス制度により、初年度から消費税の課税事業者であれば、必ずしも資本金1000万円未満にする必要がなくなってきています。
インボイス制度によって消費税の課税事業者になるかどうかは、自身の事業内容や取引関係によって変わります。

貸店舗駐車場は消費税の課税対象賃貸の住宅物件は消費税の非課税対象です。
インボイス制度の導入に伴い、貸主が免税事業者で、借主が課税事業者の場合、引っ越してしまう可能性も考えられます。
借主にとって、貸主が消費税の免税事業者だと、より多くの消費税を納付しなければならないからです。
インボイス導入に伴い、取引先をふるいにかけなければならなくなってきています。
不動産賃貸業を運営している場合、貸物件の状況を踏まえて「適格請求書発行事業者」になって消費税を納付するかどうかを検討しなければなりません。

不動産業のスタート時に税務署へ提出が必要な2つの書類

不動産業に関わらず、法人設立したら2つの書類を税務署に提出する必要があります。

●法人設立届
●青色申告承認申請書

代表者や従業員等に給料を支払う場合は以下の2つの書類提出も必要です。

●給与支払事務所等の開設届出書
●源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(従業員が常時10人以下の場合)

適格請求書事業者になる場合は以下の書類も提出しなければなりません。

●適格請求書発行事業者の登録申請書

青色申告承認申請書は個人事業主のイメージが強いですね。
法人にも白色申告青色申告があります。

法人の場合、青色申告承認申請書を提出していれば、損失が発生しても10年間損失を繰り越し可能です。
個人事業から法人成りした会社は初年度から黒字のところもありますが、多くの場合初年度は赤字スタートです。特に、不動産賃貸業で規模の大きい物件をはじめに購入すると、登記費用や不動産取得税の影響により1期目が赤字スタートというのはよくあります。

青色申告の特例を活用しましょう。

設立前から税理士に依頼している場合、税務署に提出する書類はほとんど税理士が提出してくれます。
税理士に依頼しないのであれば、自身で書類提出が必要です。
提出には期限があります。
税務署のホームページを確認して期限までに提出しましょう。

決算時期を決める時のポイントは業務・消費税・資金繰り

法人の場合、決算月を選べます。
法人で決算時期を決めるなら、以下の3つを考えて決定しましょう。

●業務負荷
●消費税
●資金繰り

●業務負荷の観点
繁忙期に決算月や税務申告月は避けましょう。
決算月前後は決算作業や棚卸など、通常業務に加えて、決算業務が発生します。
決算月から2か月以内には税務申告も必要です。
決算業務を税理士にすべて依頼しても、税理士から資料の追加請求や確認を求められるでしょう。
税理士は資料等の確認が取れなければ、税務申告書類を作成できません。
税務申告が遅れるとペナルティが待っています。
業務負荷を考えると繁忙期に決算月や税務申告月をもってくるのは避けましょう。
サラリーマン大家さんの場合は、サラリーマン業務の繁忙期も避けるといいです。

●資金繰りの観点
税金納付時期には、税金納付できる現金が必要です。
以下の時期は避けましょう。

✓閑散期で現金がない
✓従業員に賞与を払ったので現金がない

決算期は株主総会の特別決議等により変更できます。
定款を変更し、税務署・県税事務所、市町村に「異動届出書」と「定款変更の議事録」を提出すればOKです。

上記以外にも取引先に合わせた決算月にするケースもあります。
行政と取引が多いのであれば3月決算、海外取引が多いのであれば12月決算にする会社もあります。
ちなみに個人事業の場合は1月から12月で決算です。

不動産賃貸業や不動産管理業の場合、入居者が引っ越ししたタイミングで修繕・清掃が必要です。

引っ越しの多い3月4月を決算月にしない、税務申告月にしないようにするといいでしょう。

不動産購入時は契約書の内容をくまなくチェック

不動産購入の際には契約書の内容をくまなく確認する必要があります。
特に不動産購入時は動く金額が大きいです。
不動産売買の取引に関する契約書は、まず自分にとって不利な内容がないか確認が必要です。
不動産売買契約書の内容によって経理処理も変わってきます。
不動産売買契約書を交わす際は隅々までチェックしましょう。

不動産に関する契約書は消費税の取り扱いを必ずチェック

不動産に関する契約書では、消費税の取り扱いを必ずチェックしましょう。
不動産はそれぞれ消費税の取り扱いが異なります。

●不動産売買契約書における建物の消費税
不動産売買契約書には、土地金額と建物金額及び消費税、もしくは取引総額と消費税を記載しなければなりません。
不動産取引では、消費税が課税されるものと課税されないものがあります。
建物取引は消費税が課されるため、建物部分の消費税は契約書への記載が必要です。
ただ実務上、取引金額として、土地と建物の合算金額を売買契約書に記載するケースもあります。
土地と建物の合算金額を記載した売買契約書でも、消費税の金額は記載必須です。
土地と建物の合算金額が記載されている場合、経理処理では建物価格を消費税から逆算することもあります。
不動産仲介業者の「うっかり」で消費税の記入漏れがあるケースも。
建物の消費税は必ず確認してください。

●不動産売買契約書に建物価格0円とある場合の課税仕入

・土地建物を同時に取得した
・古い建物を購入する

上記の状況だと建物価格が0円となっているケースもあります。
不動産売買契約書に記載する建物価格は、当事者の契約意思を表示するものです。
建物価格が0円で双方合意があれば、0円取引でも問題はありません。
ただ、この場合でも建物代金をいくらにするかは税務上大きな問題です。

建物取得後利用するかどうか
建物を利用する場合、大規模な修繕や改修が必要な可能性もあります。

取得後も自社使用又は賃貸にする場合、取得後建物等の減価償却費計上による節税、建物取得時の消費税の仕入税額控除の問題があります。

②を考慮して建物価格、建物価格に係る消費税を決定する必要があります。

建物に係る消費税は、売主買主ともに一致が原則ですが、
売主・買主が金額を示し合わせて申告するわけではないので、一致しないことも多々あります。

不動産売買契約書は1通につき所定金額の収入印紙が必要

不動産売買契約書は1通につき印紙税額が定められています。
代金決済とともに買主に所有権移転登記をするので、契約書の原本を売主が所有する必要はありません。
不動産譲渡契約書の末尾等に「本契約の証として、本書1通を作成し、買主が原本を補完し、売主はそのコピーを補完する」と文言を付ければ、印紙は1通分のみで問題ありません。
売買契約書を借主売主ともに1通ずつ作成し、両方に自署をすると、2通とも印紙が必要となります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm

賃貸借契約書の消費税は締結前に再度確認してから締結を

不動産賃貸業の場合、入居者との間に賃貸借契約書を締結します。
賃貸借契約も内容によって消費税が変わってきます。
賃貸借契約を締結する前に、再度消費税を確認してから契約締結を行いましょう。

●賃貸借契約書の駐車場消費税
駐車場として使用させる部分は、消費税の課税対象です。
土地の譲渡、貸付は消費税の非課税取引なので、駐車場は消費税の課税対象外と考える人もいます。
アスファルト塗装やフェンス設置がされて、駐車場施設と考えられる状況であれば消費税の課税対象です。
場所によっては土地の貸付なのか、駐車場の貸付なのか微妙な状況もあります。

使用用途を賃貸借契約書に明記し、事前にトラブル防止につなげましょう。

●事務所家賃にかかる消費税
事務所家賃には消費税がかかります。
賃貸借契約書に賃料を建物部分と土地部分に区分して記載し、建物部分は消費税の課税対象に、土地部分は消費税非課税にすればよくない?と思いますよね。
事務所家賃は、土地と建物部分を区分して契約しても、合計額を建物部分の家賃と解釈されます。
このため、建物と土地を分けた賃貸借契約書を作成しても、土地部分も消費税の課税対象とされます。
事務所家賃のほかに、ほぼ土地を貸している状況である野球場やテニスコートなども消費税の課税対象です。

●賃貸収入の消費税経過処置
事務所家賃をはじめ、店舗やテナントとして賃貸借契約をしている場合、消費税が発生します。
家賃の賃貸借契約書には、更新を自動継続にしているものをよく見かけます。
賃貸借契約書を自動更新にしているのであれば、消費税の税率変更があった時点で、事務所家賃や駐車場の消費税を確認しなければなりません。
自動継続は解約申出期限を過ぎた時点で、当事者の合意があり、新たに契約締結がされたとみなされます。
このため、消費税率が変更になった場合、当初契約時の消費税率ではいけません。
解約申出期限の時点で新しい消費税率が適用されます。
ホイホイ消費税の税率を上げないでほしいですよね。

不動産購入時の不動産仲介手数料は取得原価で計上

不動産購入した際に発生する不動産仲介手数料などは、取得原価に計上しなければなりません。
購入時の支払いはすべて取得原価に算入必須ではなく、支払った時に費用できるものもあります。

仲介手数料と固定資産税清算金は取得原価で計上

不動産購入時に発生する仲介手数料固定資産税清算金取得原価計上しなければなりません。
不動産購入時に取得原価に入れるかどうか毎回悩むでしょう。
また、不動産業の経理ミスとしては非常に多いのが不動産取得時の支払いを取得原価に入れるか費用にするかです。

取得原価に算入しなければならない費用

✓仲介手数料
✓固定資産税清算金

 

取得原価に算入せず、支払い時に費用にできるもの

✓各種清算金(管理費・修繕積立金・駐車場料金等)
✓不動産取得税
✓登録免許税
✓司法書士報酬
✓印紙代
✓融資関連費用

上記をすべて覚える必要はありません。
毎回調べて確認しましょう。

返済不要の敷金や保証金は収益処理

返済不要の敷金や保証金は、収益として処理する必要があります。
これは敷金や保証金を返済しないと確定した時点で、全額収益計上です。
例えば20年の定期建物賃貸契約を締結し、締結時に受領した敷金は返済を要しないものとした場合、敷金は20年の均等償却ではありません。
最初敷金を受領した時点で、敷金全額を収益で計上します。
返済を要しないと確定した年度で全額収益として認識されます。

土地を買ったら建物がついてきたときの取壊費用は土地の取得原価に

土地を買ったら建物がついてきたときの取り壊し費用は、土地の取得原価に入れます。
土地を使用する目的で土地を購入しようとしたら、建物が建っていた、といった状況もあります。
土地使用が目的なので、建物はいりません。
建物がいらないのであれば、取り壊して土地を整備するでしょう。
土地の購入からおおむね1年以内に建物を取り壊した場合、建物の取得価格と取り壊し費用は土地の取得原価に入れなければなりません。

土地と建物を一括取得した場合、支払い額には土地と建物両方の価格が含まれています。
建物を継続利用する場合、前述したように土地価格と建物価格を分けます。
ただ、建物を使用しない場合、土地と建物の価格を分ける必要はなく、すべての金額が土地の取得価格です。
建物を使用するか、建物を取り壊して土地にするのか、を決定するのはおおむね1年以内とされています。
「もともとは建物を使う予定だったけど、やっぱり使わないから壊した」というのが取得から大体1年であれば、土地の取得価格に含めなければなりません。

不動産業社長の給料は最初に決めろ!

不動産業でなくても法人を設立したら、まずは社長の給料を決める必要があります。
サラリーマン大家さんの場合、サラリーマンの給料でやっていくから法人からの給料はゼロ、といったケースもあります。
しかし、今から会社経営のみで生活していくならお金は必要です。
社長をはじめ、法人役員に給料支給する場合、以下の3つに該当しなければ損金算入されません。

●定期同額給与
●事前確定届出給与
●利益連動給与

決算終了後以外のタイミングで、「会社の利益が大きくなりそうだから、来月から役員報酬を上げたい」は基本的にはできません。

社長や役員の報酬は定期同額給与が基本

従業員の給料は変動しても問題ありませんが、社長をはじめとした役員報酬の決定にはいくつかの要件があります。
この要件に当てはまらなければ、会社の経費として認められなくなってしまいます。

社長をはじめとして役員への給料は定期同額給与が基本です。

定期同額給与
毎月同じ金額を払うこと。
法人設立してすぐに役員報酬を決定する時は、税理士に相談するとしょう。
想定される収入と支出を計算して、役員報酬額の目安を試算してくれます。
役員報酬の変更は期の初月から変更できないわけではありません。
3月決算の場合、6月支給分から役員報酬が変更するのは問題ありません。
役員報酬は以下の状況であれば支給額を変更できます。

✓業績等の悪化で役員給与の額を減額する場合
✓期中に複数回の改定が行われた場合
✓期中に病気のため職務執行ができない時期

状況によって減額できないケースもあるので、支給額の改定をする前に税理士に相談しましょう。

社長や役員は定期同額給与が基本ではありますが、事前に届出を出せば毎月の役員報酬に加えて賞与支給も可能です。
利益が出たから社長に給料を、というわけにはいかないので注意しましょう。

従業員への現物支給は給料課税

従業員に「偉業達成したら自社商品をプレゼント」といったやり方をする会社もあります。
従業員に自社商品の支給をした場合、給料として課税しなければなりません。
以前「業績悪化と不景気の影響で、冬季賞与は数の子」といった会社がありました。
各家庭のおせちを配慮したのかもしれませんが、数の子分は従業員給料の課税対象です。
数の子価格分の所得税を従業員は負担しなければなりません。

一定の要件を満たせば、永年勤続者に対しては給与課税とならず、記念品等の支給が可能です。
以下のどちらも該当することが要件です。

・金額が勤続年数を考え、社会通念上妥当と認められる
・期間が10年以上勤務した人を対象としており、なお、2回以上支給する場合は5年以上の間隔を置いて実施する

注意しなければならないのは、旅行券を支給する場合は原則給与課税です。
理由は「一般的に有効期限がなく、換金性があるので現金支給と変わらないから」とされています。

ただ、以下の要件を満たしていれば、旅行券を支給しても給与課税の必要はありません。

・旅行の実施は旅行券支給の1年以内
・範囲は旅行券の額から妥当なもの
・旅行を実施したときは所定の報告書・確認できる資料の提出
・1年以内に実施しなかった場合・残った場合は会社へ返す

従業員に何かものをプレゼントしたのであれば、プレゼント内容決定前に税理士に相談しましょう。

従業員が10人未満の場合は納期の特例が利用可能

従業員が常時10人未満の場合、納期の特例を利用できます。
従業員に給料を支払う際、給料から源泉所得税を差し引いて支払います。
預かった源泉所得税は、会社が従業員に変わって税務署に納付しなければなりません。
本来、従業員から預かった源泉所得税は、毎月税務署に納付が必要です。
納期の特例を活用すると、従業員から預かった源泉所得税の納付は年2回にです。
税務署に納期の特例の届出を提出しなかった場合や、従業員が10人以上いる場合、原則、従業員から預かった源泉所得税は毎月納付しなければなりません。

納期の特例とは年2回まとめて納付できる特例制度です。

1月から6月までに支払った給与等から差し引いた源泉所得税は7月10日の納付期限
7月から12月までに支払った給与等から差し引いた源泉所得税は翌年1月20日の納付期限

納付の特例となる源泉所得税は以下の2つです。

✓給与及び退職金の所得税及び復興特別所得税
✓弁護士・司法書士・土地家屋調査士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・測量士・建築士などの報酬の所得税及び復興特別所得税

外注費で預かった源泉所得税は毎月納付しなければなりません。

6か月まとめて納付するために、どこかに貯めておく必要がある会社もあります。
納付が遅れると延滞税のリスクがあります。
納期の特例は納付回数が少なくて楽ですが、資金繰りが厳しい会社の場合、普段から納付に向けて管理が必要です。

従業員が10人以上になった時点で、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなかったことの届出書」の提出が必要です。
また、源泉所得税だけでなく、従業員から預かった市県民税にも納期の特例があります。
状況に合わせて活用しましょう。

小さな法人でも社会保険には加入必須

個人事業主の場合、業種やスタッフの人数によっては社会保険への加入義務はありません。
ただ、法人は社長1人の会社でも、社会保険は加入必須です。
必ず加入手続きをしましょう。

社会保険とは別に、労働保険は従業員が1人でも勤務していると強制加入です。
労働保険は一般的に「労災保険」「雇用保険」がセットです。
社会保険加入にはそれぞれの機関に必要書類を提出します。

労災保険は管轄の労働基準監督所
雇用保険は管轄のハローワーク
社会保険加入は管轄の年金事務所

社会保険の加入は自身でも可能ですが、社会保険労務士に依頼すると手続きがスムーズです。

不動産業専門の税理士が日常業務で注意している取引

不動産業を専門に扱う税理士は日常業務における仕訳で、必ずチェックする取引があります。
不動産業にかかわらず、会社の経理担当が記帳している場合、基本的に税理士は仕訳内容をチェックしています。
ただ、要確認の仕訳は、経理担当者も再度注意が必要です。

家賃収入や不動産取引の消費税は要チェック

家賃収入不動産取引消費税は毎回確認します。

●家賃収入
家賃収入の場合、法人と契約しているケースもあります。
法人契約の場合、使用目的が住宅なのか、オフィス利用かによって消費税が変わってきます。
法人によっては従業員に社宅として提供しているケースもありますからね。
使用用途は再度確認が必要です。

●不動産取引
不動産取引をした場合、必ず不動産売買契約書は確認します。
前述していますが、建物の価格、消費税は必ず確認しています。
不動産に関する会社で経理業務をやっている人は不動産売買契約書を必ず確認しましょう。

不動産管理会社に支払った時は取引状況をまず確認

不動産賃貸業をしている場合、不動産管理会社に管理を依頼しているケースもあります。
不動産管理会社は清掃や環境維持に加え、修繕を行ってくれます。
修繕は内容によって資産計上です。
物件修繕や普段ない支出があったら、必ず内容を確認しましょう。

役員に無利息でお金を貸すのはNG

不動産業務にかかわらず、役員に無利息で会社からお金を貸すのはNGです。
従業員の中には、入院や急な出費で給料を前借りする人がいます。
従業員へ給料の一部を先に支払った場合、次の給料で先に支払った分を差し引いて支給を行えば問題ありません。
ただ、会社から役員や従業員に次の給料で相殺できないほどのお金を無利息で貸すと、給与とみなされ課税されるので注意が必要です。
多くの場合、会社から多額のお金を貸す相手は役員でしょう。

会社からお金を貸す際の利息目安は以下です。

会社の借入金の平均調達金利

貸付を行った日の属する年の特例基準割合による利率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2606.htm
その金銭を会社が他社から借り入れて、貸し付けたものであることが明らかである場合には、その借入金の利率

無利息や適性利率以下の利息でも給与とみなされないものもあります。

●災害等により臨時的に資金が必要となった場合
●合理的な利率と認められる場合
●利息が年間5,000円未満の場合

会社からお金を貸す時にも2点注意しましょう。

●根拠書類(金銭消費賃貸借契約書、取引先会議事録)の作成・保存
●金融機関の評価

銀行に融資を依頼する場合、役員に多額の貸付金があると「役員貸付金がなくなったら融資するよ」といわれるケースもあります。
金融機関にとって役員貸付金は不良債権の認識です。
金融機関は仮に会社に融資しても社長個人に流れてしまう、事業とは関係ないものに利用される、と感じます。

金融機関からお金を借りる予定があれば、早く返済してもらいましょう。

不動産業務特有のトラブル処理

不動産業務特有のトラブルもあります。

・夜逃げ
・家賃未回収
・退去による修繕
・大規模修繕の必要

夜逃げや家賃未回収の内容によってはすぐ損金にできない取引もあります。
退去による修繕や大規模修繕によっては資産計上が必要です。

不動産賃貸業での借主による夜逃げはすぐに損金処理できない

不動産賃貸業で困るのが入居者の夜逃げです。
貸主としては借主の夜逃げは未然に防ぐのは難しいです。
夜逃げする状態なので、家賃滞納もあり、部屋には家具家電を置いたままの状態が想像できます。
夜逃げであれば入居者とも連絡が取れませんし、家具家電も勝手に処分すると損害賠償の可能性もあります。
家賃滞納分だけでも貸倒損失として損金計上したいところですが、税務上は要件を満たさなければなりません。

夜逃げのようなトラブルがあった場合、すぐに税理士に相談し、処理を確認しましょう。

賃貸住宅の改修工事は全額費用にできないケースも!?

賃貸マンションの老朽化や雨漏り修繕の中には、全額修繕費として処理できないものもあります。
全額修繕費にできるかどうかは、金額ではなく、内容によって判断されます。
固定資産の価値を高め、耐久性向上が認められるものについては、「資本的支出」とされ、資産計上です。

明らかに資本的支出と該当される場合を除き、以下に該当すれば「修繕費」で計上できます。

✓修繕・改良等のために支出された金額が60万円以下
✓前期末における資産の取得価格の10パーセント程度以下

用途変更のための模様替え、改造・改装費用は原則資本的支出に該当します。
和室から洋室の模様替えも、修繕費の主張は難しく、固定資産の価値を高めたと認められる可能性が高いです。

不動産退去時に借主から受け取った原状回復相当額は収益計上

不動産賃貸業を行っている場合、入居者退去のタイミングで「原状回復費」を請求する契約もあります。
原状回復費は入居者退去後、次の入居者のために部屋の状況を原状回復するものです。
原状回復費相当額は、受け取った時点で収益計上しなければなりません。
貸主としては工事費用に充てる目的で受領しているので、「預り金」として処理したいでしょう。
預かったとはいえ、かかった費用に残額が出ても返済しないので、「原状回復費」を受け取った時点で収益計上です。
「原状回復費用が確定してから退去者に請求する」といった契約内容であれば「預り金」で処理しても問題はありません。

不動産投資業務での交際費は給料になる可能性も!?

不動産投資業務にかかわらず、交際費が多い会社は交際費を今期いくら使ったのか気にしている会社も多いです。
「会議費」か「交際費」で悩む、「福利厚生費」だと思っていたら「交際費」といった状況は何度も出てきます。
状況によっては「交際費」計上していたら「給料」とみなされるケースもあります。

社内飲食は全員自社社員でも接待交際費計上

「接待交際費」とは会社が取引先や事業関係者に対する接待や贈答等の費用とされています。
状況によっては、取引先や事業関係者に対する接待でなくても「接待交際費」で計上しなければならないケースがあります。
例えば参加者全員が自社社員で、1人10,000円以下の飲食をした場合「会議費」ではなく「接待交際費」です。
1人当たり10,000円の飲食は、「接待交際費」ではなく、「会議費」で計上できる、というのはよく聞きます。
実際1人10,000円以下の飲食をしたときは「会議費」として計上している会社は多いでしょう。
しかし、この10,000円以下の飲食に社内飲食費は含まれません。
会議をしながら飲食をした、会議の合間に飲食をした場合は「会議費」として計上できます。
懇親会として社内で飲食する状況があるなら、注意が必要です。

情報提供料は交際費扱いのケースも

情報提供者に対して支払う情報提供料は一定の条件を満たさないと「接待交際費」計上です。
情報提供を本業としていない相手へ支払う情報提供料は基本的に「接待交際費」の扱いです。
特に不動産投資をする場合、投資したい地域に知人が住んでいると、気軽に情報提供を依頼してしまいます。
知人に渡した情報提供料を交際費とされないためには3つの要件が必要です。

・金品交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること
・提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けたこと
・交付した金品の価格がその提供を受けた役務内容に照らし相当と認められること。

もし情報提供が本業でない知人に情報提供料を支払いたいのであれば、要件を満たしましょう。

自社従業員のための保養所が個人給料になる事例も

保養所や別荘などの福利厚生施設を所有し、無償又は定額で役員や従業員が利用できる福利厚生を考える会社もあります。
会社の福利厚生としていても、実際は社長や役員、その家族だけしか利用できない状況になっているなら注意が必要です。
実際は従業員が保養所や別荘の利用実績がなく、社長や役員、その家族のみ専属で利用できる状況になっているなら役員の給料扱いです。

保養所や別荘の利用が給料とされないためには、以下3つの要件に該当する必要があります。

✓利用者が受ける経済的利益が著しく多額でないこと
✓全従業員が利用できること
✓利用状況を記録しておくこと

保養所や別荘でなくても、従業員の福利厚生として、リゾート施設やレジャークラブに入会するケースもあります。
中小企業の場合、会員制施設等の会員になり、従業員が利用可能にすることが多いです。
会員制施設の入会金は、以下の特徴から資産計上が必要です。

●会員として利用できる期間が長期
●独占的な利用券が付保される

一部の役員が利用するためであれば、給与として課税されます。
リゾート施設やレジャークラブの入会金は、加入目的や利用実績に応じて「福利厚生費」「交際費」「給与」のいずれかです。
「福利厚生費」とするためには役員を含めた従業員全員が、平等に利用できる状況であり、実際に利用が必要です。

規定等を文書にし、確認できる状況にもしておきましょう。

従業員のための自動販売機!従業員が購入すれば雑収入扱い

従業員のために自動販売機を導入した場合、従業員が購入すれば雑収入扱いです。
近くにコンビニもスーパーもなく、従業員は飲み物すら購入できない場所に立地する会社もあります。
「近くに飲み物も購入できないのであれば」と会社は自動販売機導入を検討するでしょう。
実際すでに自動販売機導入済みの会社もあるでしょう。
自動販売機を建物内に設置すると、購入するのは基本的に従業員のみです。
飲み物購入で従業員が自動販売機で支払った飲み物対価は「雑収入」扱いです。
自動販売機を建物の外に設置すると近隣住民も利用します。
もちろんこの時の自動販売機収入も「雑収入」で処理します。
会社の自動販売機収入は税務調査の際も計上されているか見られる事項です。

会社に自動販売機収入があるのであれば、記入漏れが内容に注意しましょう。

事例の会社はどこに事務所を構えているかわかりませんが、パート1人と自身のためだけに自動販売機を設置はしないでしょう。
所有物件の道路に面した場所に自動販売機設置は検討するかもしれません。
所有物件の敷地内に自動販売機を設置すると、1階の店舗物件を利用する人や、入居者が利用するでしょう。
このような場合も自販機収入は「雑収入」で計上します。

従業員とお客さんの合同慰安旅行は接待交際費で計上

従業員がお客さんと合同で慰安旅行に行ったときは「接待交際費」扱いです。
一方従業員だけで慰安旅行に行った場合は「福利厚生費」で計上できます。
ただ、そこに取引先の人が1人でもいたら「接待交際費」です。
従業員の福利厚生のために慰安旅行を検討する会社もあるでしょう。
慰安旅行を経費にするにも一定の要件があります。

✓旅行期間は4泊5日以内
✓海外慰安旅行の場合、滞在日数が4泊5日以内
機内での寝泊まりは1泊とカウントされません。
✓会社負担額が社会通念上一般に行われている職員旅行の範囲
✓旅行に参加する従業員等の数が全従業員数の50%超
✓自己都合で旅行に参加しなかった人に金銭支給しない

上記の要件を満たして慰安旅行を実施した場合も以下の証拠資料を整理し、残しておきましょう。

●旅行費用の請求明細
●旅行費用の領収書
●パンフレット
●写真

不動産業務の税務調査と対策方法

不動産業務の税務調査対策は毎日の経理を適切に行うことが大切です。
不動産業務にかかわらず、税務調査はない方がいいです。
税理士の中には「腕の見せどころ!」とやる気に満ち溢れる人もいるようですが、税務調査がないに越したことはありません。
仮に税務調査になった場合、税理士に依頼していないのであれば、すぐに依頼するのがおすすめです。
税務調査官によっては税理士の有無で態度が違います。
税務調査官は全員が税金に詳しいわけではなく、間違った法律解釈で多額の税金納付をさせようとしてきます。
法律解釈が間違っている以前に、だますような手口で追加の税金納付をさせようとする税務調査官もいるようです。
税務調査官も組織の一員で、税金を1円でも多く巻き上げるのが出世への第一歩。
税金を知らない人は税務調査官にとっていいカモです。
税務調査では日々の経理を適切に行うことを前提に、「行政職員は基本善人」とは考えず、法律に基づいた反論が必要となってきます。
毎日の取引に不安があれば税理士に都度確認し、仮に税務調査があった場合は、法律に基づいて反論できる状態にしておく必要があります。

常日頃から、経理資料は管理・保管しておきましょう。

不動産業に強い税理士探すならインターネットで検索

不動産業に強い税理士を探すなら、インターネットで検索するのが一番です。
税理士に依頼するかどうか悩むなら、依頼した方がいいです。
個人事業であれば、必ずしも税理士に依頼しなければならないものではありません。
ただ、株式会社をはじめとする法人であれば、迷わず税理士に依頼しましょう。
不動産業で税理士を探すのであれば、インターネットで「不動産 税理士」で検索します。検索地域の税理士が多く出てきます。
出てきた税理士の中から自分に合った税理士を探しましょう。

不動産業で頼れる税理士を探すなら経験と実績がポイント

不動産で頼れる税理士かどうかは、どれだけ不動産業の税務をやってきたかによります。
不動産業で税理士を探すなら以下の税理士を探すといいでしょう。

●不動産投資している税理士
●不動産投資顧問の経験が豊富
●不動産投資顧問の実績が豊富

税理士も医師と同様に専門分野があります。
医師ほど明確ではありませんが、大きく「相続・贈与」「会計」で分かれている印象です。
さらに専門的に「私は美容院の税務しかやりません」「クリニック専門の税理士です」と決めている税理士もいます。
大きな税理士事務所の場合、事務所自体はすべての税務を網羅し、案件によって部署に振り分けて業務を行うので、税理士個人に専門があるようです。
小さな事務所でも税理士が複数いる場合は、専門分野を振り分けて業務にあたるケースも。
法人で不動産業を行っているのであれば、「会計」中心に業務を行う税理士に依頼するのがいいでしょう。
税理士事務所を探す際、大きい、小さいよりも、自分に合った税理士もしくは担当者であるかが重要です。
どの税理士がいいかは人によって様々です。
以下を参考にして税理士を探すといいでしょう。

✓質問に明確な回答をくれる
✓税理士がその場で回答できない場合、調べてから回答をくれる
✓質問から回答までの期間が短い
✓フィーリング

個人で不動産賃貸業を行っているなら、日常業務は「会計」税理士への依頼がいいでしょう。
自身が高齢や病弱で、今後誰かに引き継ぎたいなら「相続・贈与」を中心にやっている税理士に依頼するのがいいです。
「会計」中心の税理士に依頼していると、事業主に急な相続が必要になった場合の対応が不安です。
「会計」中心で活動している税理士の多くは、顧問先に「相続・贈与」の案件があるとほかの税理士を紹介してくれます。

自分にもしものことがあった時の対応を、事前に税理士に確認しておくといいでしょう。

不動産業を営むなら税理士に依頼した方がメリットは大きい

不動産業の経理処理は特例が多く、普段から税務業務をしていなければ把握しきれません。
不動産業務を行うのであれば、税理士に依頼した方がいいです。
特に普段は不動産業とは別のサラリーマンをしながら不動産業経営をしているなら、迷わず税理士に依頼しましょう。

サラリーマン業が忙しい人ほど、すべて丸投げできる税理士に依頼した方がいいです。

不動産業の経理処理ミスは、依頼する税理士が発見するケースもあれば、税務調査で発覚するケースもあります。
不動産業務の場合、1つの仕訳ミスによって会社の利益は大きく変動します。

個人事業主で確定申告するなら、自分でもなんとかなるでしょう。
一方法人の場合、迷わず税理士に依頼した方がいいです。
税理士事務所では税務申告ソフトを使って税務申告書類の作成を行います。
10年以上税理士事務所で働いていますが、法人の申告書を手書きで作成できる自信はありません。
面倒だからやりたくないけど、個人の確定申告書であれば、手書きで作成できます。
税理士の中には、現在も手書きで法人の税務申告書を作成している税理士ならできるでしょうが、私には無理です。
手書きで法人の税務申告書類を作成するなんて職人の域です。
前述していますが、最近は手軽に使える税務申告ソフトはあります。
ただ、完成する税務申告書類が正しいかは怪しいです。
毎月複数の法人税務申告書を作成していても、手書きで作れる自信はありません。
法人で不動産業を行うなら迷わず税理士に依頼した方がいいです。

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